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エリアマーケティング 

地域性に対応のマーケティングを考える


裏が,幸せ。

   
北陸新幹線開業で どう変わる? 日本海側の「裏性」の魅力
                      
 北陸新幹線が金沢まで開通し,おおいに賑わっている北陸地方。私も一番列車に乗って富山へと行ったのですが,あちらはまさに,お祭りのように盛り上がっていました。駅の近辺は,新幹線に乗ってきた人,これから乗る人,見物の人などでごった返し,
「富山じゃないみたいだ……」 と,地元の方が呆然とつぶやいておられました。

 東京の者からすると,北陸新幹線の開通によって,北陸方面への旅がぐっと楽になるわけです。便利な手段が一つ増えた,という感覚でしょう。しかし富山の方にお話をうかがうと「新幹線は本当に,五十年来の悲願だったんですよ」と,噛みしめるようにおっしゃいます。
「子供の頃から,新幹線が走る走ると言われていたのに実現が遅れに遅れて,どうしてこちらだけ差別されるの,って思っていました。親にしても祖父母にしても,新幹線を楽しみにしていた人達は皆,あの世に行ってしまい……。だから皆の気持ちとともに,この新幹線に乗るつもりです」 とも。
 富山から東京の直線距離は,約二百五十キロ。京都・東京間よりも百キロ以上近いですし,名古屋よりも近いのです。しかし今までは新幹線が存在しなかったために,鉄路では乗り換えを余儀なくされて,京都に行くよりもずっと時間がかかっていました。空路も,特に冬季は悪天候のために欠航になったり,途中で引き返したり。
 富山が日本海側に存在し,東京との間には山があるからこそ,直線距離は短くとも鉄路で行くには難儀をしていたわけです。しかし,「そこに山があるから」 こそ,守られていたものもあるのではないかと,私は思うのでした。日本海側に旅をすると,美しい水と自然,少ない人,美味しい食べ物に感動するもの。それは,東京等の大都市との行き来が多少不便で,大都市との問に山がたちはだかっているからこそ保たれた「清さ」なのではないかと思うのです。北陸三県の幸福度が軒並み高いのも,その辺りと関係しているのではないでしょうか。

『裏が,幸せ。』では,日本海側の各地域における,裏であるからこその幸せの数々について記してみた私。東京から行くとびっくりするほど美しい景色や澄んだ空気がふんだんにあるのが日本海側であるわけですが,あちらに住む皆さんは,「いやぁ,こっちには何にも無いから」 とおっしゃいます。その「気づいていない感じ」がまた,東京のようなギラギラした街に住む者からすると,たまらないわけですが。
 日本海側はかつて「裏日本」と呼ばれていたことがあります。不快に思う人もいるということで使用されなくなり,今となっては若者が,「裏日本っていう言葉があったんですねぇ。なんか,格好いい!」
 と言うのでした。誰にでも開かれている「表」なんかダサい,「裏」 の方がそそられる……ということらしい。
 若者にとってのみならず,表っぽいものは日本のあちこちにあるため,既に飽き飽きしている私達。特に今,右肩上がりのイケイケの時代が終わったことを自覚する日本人にとって,しっとりと落ち着いた〝裏感〟というものが,いかに貴重なことか。

 新幹線によって,北陸の地は東京と直接つながりました。が,私は彼の地の裏っぽさを,大切に残していただきたいと思う者。雪,湿度,曇天……といった気象条件も,あちらの人にはうんざりするものかもしれませんが,乾いた冬の東京から日本海側に行く度に,湿度を伴う清い寒気に包まれて,私はほっとするのです。
 今であるからこそ強力な観光資源となる,裏性。新幹線の開通によって,真性をしっかりと活用できる時代が始まったということなのでしょう。

                     出典:『本の窓』2015年5月号 p2~p3 酒井順子著


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